2008年02月21日
ウィリアム・メレル・ヴォーリズ展
時代を越えて、私たちを魅了する近代建築。
なかでも滋賀県の近江八幡市を拠点に活躍し、日本の近代建築に
多大な影響を及ぼしたのがウィリアム・メレル・ヴォーリズです。
彼が日本で建築に携わってから100年を迎える今年
滋賀県立近代美術館で彼の偉業をたどる展覧会が開かれています。

近代建築ファンの滋賀咲くスタッフ・ふみさーが早速レポートしてまいりました。



3月30日まで開かれているこの展覧会のテーマは
「信・望・愛―理想の居場所をつくるウィリアム・メレル・ヴォーリズ展」。
ヴォーリズが残した建築作品を作品や映像資料、模型や資料で紹介し、
建築を通して理想の生活を築こうとしたヴォーリズの
活動と思想の系譜をたどる内容になっています。


まず、第一の展示テーマは「湖国のユートピア」。


近江八幡でのヴォーリズの暮らしぶりがわかる資料や写真が並びます。
ヴォーリズ(1880-1964)は、アメリカ・カンザス州の生まれで
現在の八幡商業高等学校の英語教師として1905年に来日。
英語教育とともにキリスト教教育にも力を注ぎますが
熱心な伝道活動のために教師の職を解かれてしまいます。
しかしその後も彼は近江八幡にとどまり、建築事務所や
現在の近江兄弟社を設立して実業家として活躍。
全国各地にすぐれた建築物を残しました。
北海道から九州まで現存する建物も数多く、大丸心斎橋店や同志社大学アーモスト館、
神戸女学院などが有名ですが、滋賀県内でも近江八幡を中心に
旧水口図書館や今津のヴォーリズ記念館、米原町醒井資料館などがあります。
1941年に日本国籍を得て「一柳米来留(ひとつやなぎ・めれる)と戒名。
彼はこよなく近江八幡の地を愛し 「近江八幡は世界の中心である」と常々語っていたといいます。
第二のテーマは「ミッション建築家として」。
ヴォーリズは大正・昭和初期にかけて多数のプロテスタント関係の建築を手掛けました。


とくに神戸女学院など、ミッションスクールの建築ではキャンパスプランニングをともなう
周囲の自然環境も含めた校舎群の設計が行われ、今回展示されている模型等からも
彼が学び舎の果たす教育的機能に配慮していることが見てとれます。
とくに関西学院上ヶ原キャンパス(模型・右写真奥)は、規模や配置計画にみる特色、
デザインの統一性などヴォーリズ建築事務所の代表的作品といわれています。
場内では各地の建築作品やその移築保存活動を紹介する映像も放映。
ヴォーリズ愛用のカメラや硯箱、自筆の掛け軸なども展示されていました。



ヴォーリズが近江八幡に次ぐ拠点とした軽井沢。
そこに作られた作品群について「軽井沢―自然の緑と住む」をテーマにまとめられています。
また、彼の著書に基づき「『吾家の設計』と住宅建築」を題材に展示。


ここでは注目したいのは、今回の展覧会の一つの目玉でもあり、新聞等でも話題となった
「浮田山荘(旧ヴォーリズ山荘)」の実物大再現。




この建物は『吾家の設計』のなかで「最小限の住宅設計」として紹介されているもの。
この本では、個人住宅の理想のあり方について、
まず台所からはじめ子供部屋を中心に考えるなど、
住宅の在り方は生活と密接に結びついていると語っています。
これって現在の住まいについての考え方を先取りしてますよね!?



また、棟数は少ないながらも長年愛されているのが彼が手がけた「都市の建築」。
荘麗で緻密な装飾瀬で都市の景観を彩り、ランドマークとして強い印象を放っています。


なかでも馴染みが深いのは大丸心斎橋店。その設計模型が残されています。
幾何学模様のステンドグラスのデザインスケッチなども展示。
大丸心斎橋といえば、ヴォーリズをテーマにしたカフェがあることでも有名ですよね。
また、京都・四条大橋のたもとにある「東華菜館(旧矢尾政)」も彼の作品。
ここのレリーフは、魚や貝など食材をモチーフにしているってご存じでしたか?
最後には全国の主なヴォーリズ建築の地図もあり、
この展覧会で知識を仕入れたあと、各地の作品をめぐり歩くのもいいかも。
子供たち向けに塗り絵のワークシートも用意されていました。


関連書籍も販売されているほか、図録も読みごたえあり。
オリジナル絵葉書セットもこの機会に手にいれたいおすすめのグッズ。



また、常設展では滋賀にゆかりの深い作品が中心に展示されています。



ヴォーリズとも親交のあった野口謙蔵の作品を中心とした
「滋賀の洋画」展3月2日まで。



「静物画の系譜」は3月30日まで。
大津市出身の画家「小倉遊亀」の作品も常設されています。
中庭に囲まれたギャラリー(2月24日までは京都新聞滋賀書き初め展)もあり、
ロビーのハイビジョンギャラリーではヴォーリズ関連の映像を放映中。


レファランスルームも充実。


展示をぐるっとひとめぐりしたあと、休憩できるレストランも。



ミュージアムショップ。


また受付では現在開催中の「淡海の博物館・美術館スタンプラリー」に
押印してもらえます。
ボランティアによる「ギャラリートーク」や
作品鑑賞プログラム「たいけんびじゅつかん」といった取り組みも実施中。
スケジュールを確認のうえ、さまざまな機会を利用すれば
滋賀のアートがもっと楽しくなりそうです。
「信・望・愛―理想の居場所をつくる
ウィリアム・メレル・ヴォーリズ展」
期 間:2008年2月9日(土)~3月30日(日)
観覧料:一般900円 高校・大学生650円 小中学生450円
※毎日13:00から美術館サポーターによる解説が行われています。
■特別講演会「窓からの眺め」神戸女学院キャンパスに見るヴォーリズの美学
日 時:3月2日(日) 13:30~
会 場:同館講堂(聴講無料)
講 師:神戸女学院大学文学部教授 濱下昌宏氏、石田忠範建築研究所 石田忠範氏
■日曜美術鑑賞会(展示品解説)日 時:3月16日(日) 午後2時~
会 場:同館講堂(聴講無料)
■ヴォーリズ展開催記念 友の会講演 「ウィリアム・メレル・ヴォーリスと私の出会い」
日 時:3月20日(祝)14:00~
会 場:同館 教養室
講 師:本城博一氏(元県建築課長・元県教育委員会事務局文化部長)
※情報は2008年2月現在。詳しくは直接お問い合わせください。
※館内展示の写真については、許可をいただいて撮影したものです。
*************************************
滋賀県立近代美術館★住所 大津市瀬田南大萱町1740-1
★電話 077―543-2111
★開館 9:30~17:00(入館は16:30まで)
★休館 月曜(祝日の場合は開館、翌日休館)
★HP http://www.shiga-kinbi.jp/index.html
★地図 地図はこちら
なかでも滋賀県の近江八幡市を拠点に活躍し、日本の近代建築に
多大な影響を及ぼしたのがウィリアム・メレル・ヴォーリズです。
彼が日本で建築に携わってから100年を迎える今年
滋賀県立近代美術館で彼の偉業をたどる展覧会が開かれています。

近代建築ファンの滋賀咲くスタッフ・ふみさーが早速レポートしてまいりました。



3月30日まで開かれているこの展覧会のテーマは
「信・望・愛―理想の居場所をつくるウィリアム・メレル・ヴォーリズ展」。
ヴォーリズが残した建築作品を作品や映像資料、模型や資料で紹介し、
建築を通して理想の生活を築こうとしたヴォーリズの
活動と思想の系譜をたどる内容になっています。


まず、第一の展示テーマは「湖国のユートピア」。


近江八幡でのヴォーリズの暮らしぶりがわかる資料や写真が並びます。
ヴォーリズ(1880-1964)は、アメリカ・カンザス州の生まれで
現在の八幡商業高等学校の英語教師として1905年に来日。
英語教育とともにキリスト教教育にも力を注ぎますが
熱心な伝道活動のために教師の職を解かれてしまいます。
しかしその後も彼は近江八幡にとどまり、建築事務所や
現在の近江兄弟社を設立して実業家として活躍。
全国各地にすぐれた建築物を残しました。
北海道から九州まで現存する建物も数多く、大丸心斎橋店や同志社大学アーモスト館、
神戸女学院などが有名ですが、滋賀県内でも近江八幡を中心に
旧水口図書館や今津のヴォーリズ記念館、米原町醒井資料館などがあります。
1941年に日本国籍を得て「一柳米来留(ひとつやなぎ・めれる)と戒名。
彼はこよなく近江八幡の地を愛し 「近江八幡は世界の中心である」と常々語っていたといいます。
第二のテーマは「ミッション建築家として」。
ヴォーリズは大正・昭和初期にかけて多数のプロテスタント関係の建築を手掛けました。


とくに神戸女学院など、ミッションスクールの建築ではキャンパスプランニングをともなう
周囲の自然環境も含めた校舎群の設計が行われ、今回展示されている模型等からも
彼が学び舎の果たす教育的機能に配慮していることが見てとれます。
とくに関西学院上ヶ原キャンパス(模型・右写真奥)は、規模や配置計画にみる特色、
デザインの統一性などヴォーリズ建築事務所の代表的作品といわれています。
場内では各地の建築作品やその移築保存活動を紹介する映像も放映。
ヴォーリズ愛用のカメラや硯箱、自筆の掛け軸なども展示されていました。



ヴォーリズが近江八幡に次ぐ拠点とした軽井沢。
そこに作られた作品群について「軽井沢―自然の緑と住む」をテーマにまとめられています。
また、彼の著書に基づき「『吾家の設計』と住宅建築」を題材に展示。


ここでは注目したいのは、今回の展覧会の一つの目玉でもあり、新聞等でも話題となった
「浮田山荘(旧ヴォーリズ山荘)」の実物大再現。




この建物は『吾家の設計』のなかで「最小限の住宅設計」として紹介されているもの。
この本では、個人住宅の理想のあり方について、
まず台所からはじめ子供部屋を中心に考えるなど、
住宅の在り方は生活と密接に結びついていると語っています。
これって現在の住まいについての考え方を先取りしてますよね!?



また、棟数は少ないながらも長年愛されているのが彼が手がけた「都市の建築」。
荘麗で緻密な装飾瀬で都市の景観を彩り、ランドマークとして強い印象を放っています。


なかでも馴染みが深いのは大丸心斎橋店。その設計模型が残されています。
幾何学模様のステンドグラスのデザインスケッチなども展示。
大丸心斎橋といえば、ヴォーリズをテーマにしたカフェがあることでも有名ですよね。
また、京都・四条大橋のたもとにある「東華菜館(旧矢尾政)」も彼の作品。
ここのレリーフは、魚や貝など食材をモチーフにしているってご存じでしたか?
最後には全国の主なヴォーリズ建築の地図もあり、
この展覧会で知識を仕入れたあと、各地の作品をめぐり歩くのもいいかも。
子供たち向けに塗り絵のワークシートも用意されていました。


関連書籍も販売されているほか、図録も読みごたえあり。
オリジナル絵葉書セットもこの機会に手にいれたいおすすめのグッズ。



また、常設展では滋賀にゆかりの深い作品が中心に展示されています。



ヴォーリズとも親交のあった野口謙蔵の作品を中心とした
「滋賀の洋画」展3月2日まで。



「静物画の系譜」は3月30日まで。
大津市出身の画家「小倉遊亀」の作品も常設されています。
中庭に囲まれたギャラリー(2月24日までは京都新聞滋賀書き初め展)もあり、
ロビーのハイビジョンギャラリーではヴォーリズ関連の映像を放映中。


レファランスルームも充実。


展示をぐるっとひとめぐりしたあと、休憩できるレストランも。



ミュージアムショップ。


また受付では現在開催中の「淡海の博物館・美術館スタンプラリー」に
押印してもらえます。
ボランティアによる「ギャラリートーク」や
作品鑑賞プログラム「たいけんびじゅつかん」といった取り組みも実施中。
スケジュールを確認のうえ、さまざまな機会を利用すれば
滋賀のアートがもっと楽しくなりそうです。
「信・望・愛―理想の居場所をつくる
ウィリアム・メレル・ヴォーリズ展」
期 間:2008年2月9日(土)~3月30日(日)
観覧料:一般900円 高校・大学生650円 小中学生450円
※毎日13:00から美術館サポーターによる解説が行われています。
■特別講演会「窓からの眺め」神戸女学院キャンパスに見るヴォーリズの美学
日 時:3月2日(日) 13:30~
会 場:同館講堂(聴講無料)
講 師:神戸女学院大学文学部教授 濱下昌宏氏、石田忠範建築研究所 石田忠範氏
■日曜美術鑑賞会(展示品解説)日 時:3月16日(日) 午後2時~
会 場:同館講堂(聴講無料)
■ヴォーリズ展開催記念 友の会講演 「ウィリアム・メレル・ヴォーリスと私の出会い」
日 時:3月20日(祝)14:00~
会 場:同館 教養室
講 師:本城博一氏(元県建築課長・元県教育委員会事務局文化部長)
※情報は2008年2月現在。詳しくは直接お問い合わせください。
※館内展示の写真については、許可をいただいて撮影したものです。
*************************************
滋賀県立近代美術館★住所 大津市瀬田南大萱町1740-1
★電話 077―543-2111
★開館 9:30~17:00(入館は16:30まで)
★休館 月曜(祝日の場合は開館、翌日休館)
★HP http://www.shiga-kinbi.jp/index.html
★地図 地図はこちら
Posted by しがまにあスタッフ at 20:00
│石山・瀬田
この記事へのコメント
ヴォーリズのまとまった学校作品として、関西学院は非常に重要です。このブログで取り上げられていないのは、不思議に思うと同時に残念です。
Posted by yuka at 2008年02月29日 21:28
yukaさま
コメントありがとうございます。
ご指摘いただきました通り、
ヴォーリズ事務所の代表作品ともいえる
関西学院について言及しておらず
なんともひと味足りない記事になっておりました。。。
追加になりましたが、解説を加えましたので
またご一読いただければ幸いです。
貴重なご意見ありがとうございました。
今後も機会をみて滋賀のヴォーリズ作品を
紹介していきたいと思っております。
ぜひともまたご意見・ご要望をお寄せください!
コメントありがとうございます。
ご指摘いただきました通り、
ヴォーリズ事務所の代表作品ともいえる
関西学院について言及しておらず
なんともひと味足りない記事になっておりました。。。
追加になりましたが、解説を加えましたので
またご一読いただければ幸いです。
貴重なご意見ありがとうございました。
今後も機会をみて滋賀のヴォーリズ作品を
紹介していきたいと思っております。
ぜひともまたご意見・ご要望をお寄せください!
Posted by ふみさー at 2008年02月29日 22:18