みなさん、ご覧になっていますか? 日曜夜8時。
高視聴率を記録している
NHK大河ドラマ『篤姫』が
いま滋賀でも話題になっています。
幕末、将軍の妻となり徳川家存続に尽力した篤姫(天璋院)。
滋賀にもその足跡は残されていて、
国指定史跡「草津宿本陣」では
篤姫が草津に宿泊したという記録「大福帳」が一般公開されています。
そもそも「本陣」というのは
江戸時代の宿泊施設のこと。
大名や幕府役人などが利用したもので、全国にいくつも存在していました。
とくに近江は参勤交代の経路にあたった主要街道がいくつも通っているため
たくさんの本陣がありましたが、明治以降、急速に姿を消しています。
草津宿は東海道と中山道の分岐点に位置した交通の要衝で
田中七左衛門本陣(木屋本陣)と田中九蔵本陣の2つの本陣と
脇本陣2軒、旅籠屋は70軒余りを数え、にぎわっていました。
国指定史跡の草津宿本陣はこの
田中七左衛門本陣で
建物はもちろん、敷地全体で当時の面影を伝えており
これだけの規模を残しているのは全国でも珍しいといいます。
門の前に掲げられているのは
「関札」。いまどなたがお泊りになっているのかを掲げたもの。
草津宿本陣には木製のものが460枚、奉書紙で2900枚もの関札が残っているのだとか。
門を入ると白州と玄関。式台が広々と取られているのは
ここに
お殿様の籠を横づけするからなんだそうです。
かつての本陣のようすがうかがえる
屋敷絵図も残っていて
現在一般公開中なのはこの図の下半分。それでも広い!
中へ入ると
畳敷きの廊下がずずっと奥まで続き、まるでタイムスリップしたよう。
本陣は通常20~30人が宿泊しましたが、大きな行列となると70~80人にもなり
廊下を部屋としても利用しました。
現在、広間に展示されているのは大福帳。1年に1冊作られたそうで
草津宿本陣には1692年から1874年にかけての約180冊
(つまり180年分!)が残っているのだとか。
今回注目したいのはその一つ、1853年の大福帳。写真中央の付箋部分には
『10月6日伏見立 一薩州御姫君様 御泊九蔵』と書かれている。
つまり薩摩藩の姫君(篤姫)が伏見を出発し、九蔵本陣(現存せず)に
宿泊したことが記されています。
ほかにも新撰組で知られる
土方歳三や斎藤一、藤堂平助の名が記されたものや、
忠臣蔵で敵同士となった
浅野内匠頭と吉良上野介が、
事件の9年前、同じ日に宿泊していたという記録も残っているそうです。
廊下の左右は東広間・西広間と呼ばれ、お付きの家来の人々が泊まった部屋。
それぞれに庭を望む座敷になっていて、風呂なども殿様用とは別にいくつも用意されていました。
そして、廊下の先に御簾で仕切られ、
一段高くなっているところは
殿様を中心に上層部の人々が宿泊した部屋。
御簾が下りているときには、この家の当主ですら奥へは入れなかったそうです。
こちらが
「上段の間」。いちばん格式の高い部屋です。
なかは畳二畳分がさらに高くなっていて、殿様はここに布団を敷いて眠りました。
これは床下から
槍を刺しても届かないように工夫されたものでもあり
修復作業の際、この上部の天井を開けてみると
一面にイバラの蔓が敷き詰められていたそうです。
偉い人は旅の途中も気が抜けなかったんですね…。
上段の間の向かいは、その名の通り
「向上段の間」。
通常は内部へ入ることはできませんが、3月16日までは
この部屋を利用して
「中神コレクション 金谷・四季の美」が開催中。
草津市の歴史・文化の普及振興に尽力した故中神良太氏のコレクションのうち
草津の異才・
横井金谷の四紀山水図15点が展示されています。
上段の間の奥は庭園。渡り廊下を進むと・・・・
その先にあるのは湯殿。なんだか広すぎて寒々しいですが
こちらも外から
湯船まで、槍などが届かない距離になっているのだそうです。
お風呂もゆっくり入れないとは! 殿様稼業も大変デス。
こちらは
雪隠。つまりトイレです。金隠しは漆塗り、目の前には季節の掛け軸を掛けたんだとか。
ほかにも
皇女・和宮が降嫁した際の行列のようすが資料に残っていたり、
この宿で急逝した殿様があり、
御家取りつぶしを免れるために
世継が決まるまでひた隠しにして遺体を預かっていた、といったエピソードも残されていました。
そして何といっても圧巻なのが高い天井をもつ
台所土間。
いくつも並ぶかまどから当時のにぎわいを知ることができます。
土間をはさんで向いにあるのがこの家の当主・田中家のプライベートスペース。
現在は古い道具類などが展示されています。
格子戸の先、
木戸の向こうにあるのは東海道。
この格子は天井に吊り挙げて
全開にすることができ、
街道から奥の庭へ
長持や馬を引きいれたんだとか。
庭には湯殿の湯を沸かすためのかまどやたくさんの蔵、馬屋が並んでいます。
東海道に面した表からは想像できないほど深い奥行きをもつ本陣。
周囲には古い街並みがいまも残ります。
残念ながら「観光物産館 脇本陣」は3月1日からリニューアル中でした。
すぐそばにはまちの歴史をさまざまな角度から体験できる
「草津宿街道交流館」もあり、あわせて行くなら本陣との共通券がお得。
江戸の昔、街道を行き交った旅人たちの浪漫に触れに出かけてみませんか。
■入館料
大人200円/高校生・大学生150円/小学生・中学生100円
草津宿街道交流館との共通券
大人320円/高校生・大学生240円/小学生・中学生160円
■篤姫関係資料展示
会 期:2008年3月1日(土)~12月27日(土)
■中神コレクション~金谷・四季の美
会 期:2008年3月1日(土)~3月16日(日)
※情報は2008年3月現在。詳しくは直接お問い合わせください。
※館内展示の写真については、許可をいただいて撮影したものです。
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草津宿本陣
★住所 草津市草津1丁目2-8
★電話 077―561-6636
★開館 9:00~17:00(入館は16:30まで)
★休館 月曜(祝日の場合は開館、翌日休館)
★HP
http://www.city.kusatsu.shiga.jp/midokoro/m_01.html
★地図
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