みなさん
“かばた”ってご存知ですか?
家のなかや敷地内に水が湧き、その噴出口に水場やいけすを作って
炊事や家事に利用するというもので、“川端”とも書き、
湖国の昔ながらの暮らしぶりを伝える水文化です。
生水(しょうず)の郷と呼ばれる高島市新旭町の針江は、
「水が生まれる」という言葉の通り、いまもおよそ100軒のかばたが残る地区。
本やテレビで紹介され、問い合わせや見学希望が増えたこともあって
地元有志がボランティアグループを結成し、毎月第2・第4土曜日に
開催されているのが
「里山 命をめぐる水辺ツアー」です。
12:30にJR湖西線「新旭駅」前に集合。
ボランティアスタッフの方々が待っていてくださいました。
この日の参加者は定員20人を上回る大盛況。地域を巡回する路線バスに乗って出発です。
バスで10分、琵琶湖岸に到着。ヨシ原の向こうに、遠く竹生島が見えます。
新旭町のヨシの群生地は琵琶湖最大。ヨシは水質保全を助けることでも知られ、
ニゴロブナやホンモロコなど琵琶湖固有種類の魚や野鳥たちの生息の場になっています。
春先に行われるヨシ焼きは琵琶湖の風物詩ですが、ヨシを刈り、焼き払うことで
芽吹きが促進されるのだとか。ヨシ原は人と自然の共生によって長い年月、守られてきたんですね。
4月、水中から針のようにいくつもヨシが芽を出すようすから、
このあたりは「針江」と呼ばれるようになったと、ガイドの方が教えてくださいました。
琵琶湖岸から針江大川へ。河口付近の中島では、野鳥たちの声が四方から響いてきます。
この川の水は、なんと
七割が湧き水。針江は安曇川の伏流水が豊富な地域で
家々のかばたから湧き出す水が水路を伝って流れ込み、
川底からも次々と水が湧いているのだとか。水源が人が住む集落とは驚きです。
写真奥に見える船とモンドリという漁具を使って、コイやニゴロブナをとるそうです。
川に仕掛けられたモンドリ
針江大川沿いに161号バイパス方面へ進み、生水の豊富な小池地区へ。
100年以上、この地の水で豆腐を作り続けてきた上原豆腐店さんもあります。
かばたには、母屋のなかの台所付近に湧出口をつくった「内かばた」と
母屋とは別棟にした「外かばた」があり、ツアーでは実際に家の中までお邪魔して
見せていただくことが出来ました。
水の温度は常に12度前後で、夏
冷たく冬
あたたかい。
夕飯のおかずでしょうか、キュウリや加茂ナスが冷やされていて、とってもおいしそう!
道端の外かばた。「ご自由にお飲みください」と書かれ、涼しげな花が生けられていました。
水の冷たさはもちろん、その心遣いに、清々しい心地でほっとひと息。
それにしてもここは自動販売機いらずですよね!
NHKの特集番組でも紹介された漁師さんのお宅。
築100年以上という民家の台所にあるのは典型的な内かばたで、
石段を上がると横にかまどがあり、そのすぐ横は居間になっています。
ひんやり涼しい水場を覗き込んでみると、そこには悠々と泳ぐコイが!
外のいけすと家の中のかばたを行き来できるようになっていて、
洗い落とした残飯などを食べて水を浄化してくれるんだそうです。
なかには、かばたや水路を自由に泳ぎ回っているノラ(?)のコイもいて、
散策の途中でもあちらこちらの水路や川で見かけました。
集落では網の目のように水路がめぐらされ、そこで小さな水車を発見!
なかに芋が入っていて、水の勢いを利用して皮を剥いているのだそう。
手前の青い筒のなかからは勢いよく水が湧いています。
魚や昆虫などもたくさんいて、ついつい足がとまります。
流れのなか、一面に咲いているのは
梅花藻(ばいかも)。
清流にしか育たないこの花は、初夏から盛夏まで花を咲かせます。
川のなかに広がるお花畑とは、なんともきれいで不思議な光景。
三段になっているかばた。いちばん上から水が湧いています。
飲む水、食べ物を洗う水、食器などを洗う水、と用途ごとに分けられています。
川を汚さないことは地域の人にとって当たり前のルール。
上流の人たちは下流の人たちを思いやり、下流の人は上流を信頼する。
そうして集落の暮らしと美しい自然が守られてきたんですね。
ツアーの締めくくりとして、公民館へ移動。
特産品の試食があると事前に聞いてはいたのですが、並んだお膳は軽食どころが
6品の料理に、川魚の煮物のお土産付き!
先ほどの豆腐屋さんの冷やっこや、鮎の天ぶら、古代米のごはんなど、
地元でとれた素材を使い、そのおいしさを存分に楽しむことができました。
作ってくださったボランティアの福田さんは「田舎料理ですが・・・」と謙遜されていましたが
針江の自然と暮らしの“豊かさ”をお料理とともに堪能させていだだきました!
食事のあいだ、有志の方によるヨシ笛とハーモニカの演奏もあり、
ガイドを引き受けてくださったボランティアの方はもちろん、
道ですれ違う住民の方々や、ご自宅を快く見学させてくださったみなさんの
暖かいもてなしが、心に残るツアーでした。
針江には、自然と共生する暮らしとともに、
私たちが便利な暮らしのなかで忘れてしまった助け合いの知恵や、
支えあう心が残されているんですね。
※針江は、実際に人々が実際にお住まいの集落で、観光地ではありません。
見学を希望される際には、ツアーへの参加のほか、針江生水の里委員会へ
ボランティアガイドの方に同行していただけるよう申し込んでください。
くれぐれも地域のみなさんのご迷惑にならないよう注意しましょう!
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<問い合わせ窓口>
(社)新旭町観光協会
★住所 〒520-1501 高島市新旭町旭1丁目10-1 (財)高島地域地場産業振興センター内
★電話 0740-25-6464
★日程 毎月第2・第4土曜日開催(予約制) ※8月第2土曜の実施はありません。
★料金 参加費一人2000円
★HP
http://www.biwa.ne.jp/~windmill/
★主催 針江生水の里委員会
★後援 新旭町観光ガイドボランティアグループ
★地図 集合場所
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針江明生会館
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