琵琶湖とともに生きる生活~沖島(おきしま)~

しがまにあスタッフ

2013年07月04日 20:00

沖島は、淡水湖にうかぶ有人の島としては日本ではたったひとつ。
また、世界的に見ても珍しいとされています。
今回の"おでかけ体験・滋賀"は、そんな初夏の沖島に出かけてみました。





島へ渡る手段は「船」。
今回は、堀切港(近江八幡市)午前10時15分出発の堀切港⇔沖島港の定期便、
沖島通船に乗船しました。


沖島通船(通称「通船」)は、通勤通学、買いもの、通院など、島の人の島外への足としても
なくてはならない定期船です。
(島外の人は片道500円。島内の人は200円。)


出航時間になると、どこからともなく人が集まってきます。




いよいよ、出発。
この日は平日でしたが、スケッチ旅行の一団、県外からの観光客、親戚に用事のある人、
週一で島の郵便局へ手伝いに通っている人、島外に持っている畑の朝仕事から帰る人など、
さまざまな人が…。




沖島は713年、藤原不比等(鎌足の子)が「奥津島神社」を建立したと言われており、古来より
神の島として湖上を行き交う舟人から航行の安全を祈願し崇拝された島であったようです。
集落として人が住むようになったのは、奥津島神社建立から400年以上のちの事、
保元、平冶の乱で平家に敗れた源氏の落武者となった7人が、島に移住したことに始まると
言われているそうです。


今でも島内には、源氏の流れをくむ7つの姓が、島民のほとんどを占めているのだとか。
島の歴史を問う私に、こんな歴史ロマンあふれる話を普段の世間話のように、さらりと語って
くれた、船に乗り合わせた島の人たち…
勿論、彼らもその7つの姓の中のひとつで…
ますます島への期待がふくらみます。



「青い海」の上を、心地よいしぶきをあげてはしること10分。
船は沖島の玄関口、沖島港に到着です。
「青い海」…沖島の人達は、琵琶湖のことを「うみ」と呼ぶそうです。
そう…そこはまさに「うみ」に浮かぶ集落でした。






さて、到着です。



お昼ご飯までにはまだ、時間があります。
まずは島内を散策…。

沖島には乗用車がなく、島内の移動はすべて徒歩か自転車。
集落の中は歩いてどこでも行ける距離なのです。

集落の中にはほとんど畑はないように見えますが、港の反対側には畑もあり、
また、船で渡った対岸にも、島の人たちの田畑があるとのこと。
島のほとんどの人が自家用の船を持ち、堀切港には自家用車も止めているそうです。




島の中の郵便物も自転車で配達。
ゆったりとした暮らしの風景が広がります。



路地の奥に入り込んだところに、お寺を2軒みつけました。
"西福寺"さんには、蓮如上人直筆の「虎班の名号(とらふのみょうごう)」が残されているという
ことで、さっそくお寺に上がって、拝見させてもらいました。


お寺の歴史もさることながら、ここでは、お寺の奥さんが撮った冬の琵琶湖の写真集が
本堂内に置いてあって、参拝者はその写真集をみせてもらうこともできます。
「うみ」が荒れる冬は島に訪れる人もほとんどなく、島の人たちは、風と寒さに耐えながら
冬を過ごさなくてはならないそうです。




そんな琵琶湖の冬の風景を切り取った写真の数々からは、私たちが普段見ている琵琶湖とは、
違う「うみ」の表情が伝わってきます。






さて、そろそろお昼です。
今日のお昼ご飯は、島の女性たちで運営している"湖島婦貴(ことぶき)の会"のお弁当をいただくことになっています。
前もって予約をしておくと、港の前の漁業会館で用意をしておいてくれます。



鮎の天ぷら、鮎の佃煮。えび豆。もろこ。ビワマスの煮つけ。山菜の天ぷら等々。
食材は、沖島周辺で獲れた、まさしく「うみの幸」。(お弁当・1000円也)
また、会館の入口では、えび豆や、鮎などの佃煮も販売しています。





ところで、お弁当をいただいたのは、漁業会館内の倉庫の前の机。


こんな飾り気のないところも素朴で、どこか遠くの海辺を旅しているようなそんな感覚に…
初夏のうみ風が心地よく吹き抜けてゆきます。




お腹もいっぱいになったところで、また、ぶらぶらと島内の散策へ…。

島の中心地には狭い路地も多く…





そんな路地の一角に、こんなお店を見つけました。



お茶がいただけるお店"いっぷくどう"さんです。


お茶とお菓子で500円也。
この日のお菓子は、島で採れたみかんを使った、シフォンケーキ。
薫り高い紅茶とともに、おいしくいただきました。
「ふと、ここを見つけて、そして入ってくださる…そんなご縁を大切にしたいと思います。」
と、涼やかな笑顔で、控えめに話す店主さん。
今度はここにお茶をしに島に渡ってきたいとも思いました。







のんびりしていたら、もう2時。
通船の出航の時間です。



帰りの船に中に、幼稚園児らしき子が一人。
一緒にいる女性に抱っこしたり手をつないだりして甘えています。
親子かと思っていたら、その子は女性を「せんせいっ」と呼んでいます。

港に着いたら、その子のお母さんらしき人が迎えに来ていて、
その子の手は「せんせい」から離れて「お母さん」の手へ。


現在、沖島幼稚園の子どもは4名。
うち、島外からのこうした通園生は3名。
沖島小学校は9名。
島外からの通学生は4名。
沖島の幼稚園や小学校は、近江八幡市のどの校区からでも通うことができるそうです。
通船の中や、島のいたるところに、学校行事のお知らせやこども新聞が掲示してありました。
島の皆さんが、こどもたちを自分の子のように大切にしていることがうかがえます。

『自然豊かな環境で学びませんか。』
通船の中の掲示板にも、そんなお知らせが載っていました。
島の学校では、ときおりオープンスクールや学校説明会なども行われているようです。
(詳しくは、近江八幡市沖島小学校・幼稚園まで。℡0748-33-9515)



これからの季節は「ビワマス」の最盛期。
ウロリやうなぎ、ホンモロコなど、夏の湖魚は脂ののりもよいそうで、
沖島ならではの美味しいものを求めて、また、美しい琵琶湖の再発見に、
この夏、あなたも島に渡ってみませんか?




帰りの船で、離れていく沖島を名残惜しそうに眺めていたら、
「沖島はね、観光の島ではなく生活の島。私たちは、ずっと琵琶湖の中で暮らしてきました。」
と誇らしげに話してくれた、里帰りから戻る島出身の人の言葉が印象に残りました。





 

沖島通船時刻表
※運賃は片道500円
  ◆堀切発  7:15日曜休     ◆沖島港発 7:05日曜休     
          7:45日曜休              7:30日曜休
          8:15                   8:00
         10:15                  10:00                      
         12:15                  12:00                   
         14:15                  14:00  
         16:15                  16:00         
         17:15                  17:00     
         18:30                  18:10    
         19:45                  19:30               
         21:00                  20:45

JR近江八幡駅北口から近江鉄道バス休暇村行きで約35分、堀切港バス停下車。
沖島通船約10分で沖島漁港。
名神高速竜王ICから国道8号・湖岸道路経由で近江八幡休暇村方面へ。
休暇村からは徒歩約1kmで堀切港。

※情報は2013年6月現在。詳しくは直接お問い合わせください。




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沖島(おきしま)

◆沖島漁業協同組合     滋賀県近江八幡市沖島町43番地
( 湖島婦貴(ことぶき)の会) TEL 0748ー33-9511
                   佃煮・弁当販売
                   ※弁当は予約制
◆駐車場             堀切港内には、島外の人が使用できる駐車場は無し。
                   堀切港近くの港屋さんに駐車場あり。
                    ※必ず電話連絡のこと。
◆沖島小学校 ホームページはこちら
◆島内の民宿          湖上荘     0748-33-9639 
                   民宿「島の宿」 ℡0748-33-9521
                   ※どちらも食事のみも可

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