文楽って、ご存知ですか?
3人の人間が1体の人形を動かす、世界でも珍しい形式の
高度な芸術人形劇・浄瑠璃。
大阪の人形浄瑠璃と文楽劇場が有名ですが、ここ滋賀県は
湖北にも、
180年近くもの歴史を持つ
人形浄瑠璃が、
地域の
伝統芸能として守られている…
って、ご存知でした?
毎年2回の定期公演が開催されていて、
次の公演は、来月7月28日(日)。
しかもその夏の定期公演には、アメリカや英国からの
留学生が参加予定で、
現在、その公演に向けて本格練習の真っ最中。
今日は、そんな
トラディショナルな
伝統と
インターナショナルな
海外文化交流を
湖北の田園風景の中で見学できる
人形会館さんを、ご紹介しますね!
< 冨田人形会館(冨田人形共遊団) >
それが、平成6年に「
ブルーレイク賞」、平成15年に「
滋賀県文化功労賞」等を受賞した、
「
冨田(とんだ)人形共遊団」の本拠地ともいうべき、こちらの
冨田(とんだ)人形会館。
平成3年に完成したこの会館には
人形浄瑠璃の専用舞台があり、人形や芝居道具等が保管されています。
入口には、「湖北エコミュージアム・サテライト」としての「人形浄瑠璃の里」の看板も。
江戸時代から続く伝統芸能が、見渡す限り一面の田園風景のただなかに佇む
この伝統的な芝居小屋風の建物の中で、地元の方々や海外からの留学生の手によって
今も守られているだなんて、なんだか奇跡にも近いような気がするのは、私だけでしょうか。
入口を入ると、浄瑠璃や人形劇に関するイベント等のポスターや数々の文化賞受賞の賞状が。
ドイツ等への海外公演もこなされてるんですね、すごいなあ!
平成6年のニュージーランド公演を皮切りに、北米各州等で意欲的に行われている
海外公演では、いつも大好評なのだそうですよ。
高い天井と畳敷きの館内には、浄瑠璃の人形や各種道具に様々の絵画や写真等が飾られ、
この冨田人形共遊団の歴史を静かに語りかけてくれているようです。
人形浄瑠璃専用の人形芝居小屋会館でもある舞台は、今日はまだ、普段着の練習用な
顔をして。
かえって貴重な様子を目の当たりにしているような、そんな気分。
うっわあ…こんな近くでしかもガラス越しでなく浄瑠璃人形を見たのは、初めてです!
そもそもこの冨田人形は、江戸時代天保年間(1830年代)に阿波国から北陸巡業に来た
人形座が大雪で興業に失敗、人形のかしらや衣装・道具等を集落に残して
近くの琵琶湖岸の早崎漁港から引き上げてしまった…という言い伝えが残ってるそうで、
実はここ琵琶湖畔の小さな集落・冨田自身で生まれた郷土芸能では無く、外部から
もたらされた芸能なのだそうですが。
その、残されいつまでも引き取り手が現れなかった荷物を使って、地元の方々が協議を重ね
せっかくの芸能を継承しよう、という動きになっていた時。
ちょうど「吉田金吾」という、人形遣いの名指導者であり人形のかしら作りの職人としても
著名な人物がこの冨田へとやってきて、滞在するご縁があったそうで。
以降「吉田座」と称して、近隣の寺社や祭礼に招かれて公演活動を行うようになったという…
そういう歴史があるそうです。
またそのせいか、昭和期に本格調査された結果によると
冨田人形のかしらの系譜の起源は、阿波国(今の徳島市)人形座の系統というよりは
大阪は豊竹座の系統であるものの方が、多いのだそうで。
豊竹って、文楽を見に行ったことのある人なら一度は聞いたことのある姓ですよね…!
今もずらりと並べられた、この人形のかしらの数々の迫力ったら…!
吉田金吾に吉田文吾、天狗久…と等の署名された多数の人形のかしらは、研究者の方からも
高く評価される貴重なものなのだそうです。
阿波・徳島や大阪では戦災や時代の流れ等で失われた江戸期以来の古い形式を遺す、
希少価値ある存在なのだとか。
手や足の部位に衣装等、こんなに多くの生の浄瑠璃人形を目の当たりに出来る貴重な会館は、
ひょっとすると全国でも数少ないのではないでしょうか。
天井近くの壁には、「竹本」姓の太夫(たゆう)さんのお名前も拝見できて、
人形浄瑠璃に詳しい文楽ファンの方がご覧になると、もうドキドキものなのかもしれません…?
もちろん太夫さんも三味線を弾く方も、地元の方々が中心です。
公演のために新しく作られたとみうけられる小道具の数々もあり、
こういったお道具があつらえられた背景にも、何か物語りやドラマが隠れていそうな。
太夫さんが床本(ゆかほん)を置く見台(けんだい)に、人形に持たせる扇、
歌舞伎でも有名な江戸の大火を題材にした八百屋お七の外題(げだい)
「伊達娘恋緋鹿子(だてむすめこいのひがのこ)」で使われるのでしょうか、はや公演日の
本番へと想いを馳せてしまう、火の見櫓の大道具…。
近隣の神社を介して入手したという本物の巫女鈴に、地元の方々が自ら手縫いで
刺繍を施したという、手縫いの衣装…
ひとつひとつに、地元の方々のひたむきな心が込められているようですよね。
この日はちょうど、つい先頃来日したばかりだという留学生の皆さんが、7月の定期公演に向けて
浄瑠璃の人形遣いの練習の真っ最中でした。
ラジカセの録音に合わせて、皆さん、真剣そのもの。
今練習している「外題(げだい)」と呼ばれる演目は
「式三番叟(しきさんばそう)~鈴の段~」という天下泰平と豊作を願うお祝いの歌舞だそうで、
賑やかな囃子(はやし)にあわせて
ドンドン!と足を踏み鳴らしながら、飛んだり跳ねたりする様子をあらわします。
やがて片方が疲れ果てゼェハァと休もうとすると、もう片方が
それを引きとめ悪戦苦闘しながらも最後まで踊りきるという、ユーモラスな舞なのだとか。
さあ、団長さんの動きを、よーく見て…
(因みに団長さん、なんと初代から数えて5代目になるのだそうです。すごいなあ…!)
交代で休憩している間も、
熱心に仲間の演技を見たり、団長さんの英語交じりの説明に耳を傾けたり。
日本語ペラペラの学生さんも居れば日本語勉強中の学生さんも居たり、団長さんも
片言の英語と日本語交じりの説明や会話だったり。
小休止のBreak Timeでは、おせんべいをつまみながらビートルズの話題が出たり
ホイットニー・ヒューストンの音楽が流れたり…
アメリカはオハイオ州にニューヨーク、テキサスにカルフォルニア、
英国はロンドンに西サセックス等からはるばる湖北に来た
この大学生や大学院生の留学生さんたちは、近隣の
一般協力家庭でホームステイし、また大阪の国立文楽劇場や
福井県は永平寺に小浜、大津の比叡山や
彦根に近江八幡と滋賀県近隣を巡って日本文化を学びながら、
7月の定期公演に向けて人形浄瑠璃を練習します。
その様子は引率の方にmovie(ムービー)録画され、
後日、アメリカではポピュラーなケーブルの
educational program(教育番組)で、ドキュメンタリーとして紹介される予定もあるそうです。
ふと見上げると、壁にはそんな歴代の留学生の学生さんたちが残していった、
各母校の大学のペナント旗が、ところ狭し。
皆さん、口コミで競争のように自校のペナントを持ってきては張っていくのだとか♪
因みに↑こちらは、学生さんたちが演じていた舞台側から客席を見た光景。
見学の申込み予約時に事前相談すれば、実際に人形を手にとって操作する、人形浄瑠璃の
体験も出来るそうなので、ご興味のある方はぜひ事前に相談してみてくださいね!
舞台の奥行きに、頭上のライトに…
こんなところまで見せてもらえるなんて、なんだか本当に感動…!
本格的なライト・ルームらしきは、
舞台の正面お客様の後ろの、客席入口の天井近くにもありました。
舞台棟の横には、控えの部屋らしき和室やスペース等もあり。
「人形に生命を宿らせる」…って↓訓読めばいいのかな?(よく分かってなくてすみません…)
まさしく、人形浄瑠璃の真髄をあらわす言葉でしょうか。
黒板いっぱいにびっしりと書かれた忙しそうな今後の予定に、
来月7月28日に長浜市湖北町の湖北文化ホールで開催される、夏の定期公演。
地域に守られ、地域に根ざした伝統芸能と、地域の方たちと。
海を渡って日本の文化を愛してくれる留学生さんたちや、次代を担うべき地域の子ども達とも。
この知られざる滋賀県の人形浄瑠璃を介した
知らざる感動のドラマは、まだまだたくさんたくさん地域の方々の心の中に、埋もれているようで。
…
そんな、素晴らしい滋賀の素晴らしい物語りたちに、出逢いに。
あなたも、ちょっと
公演前の予習や公演後の復習がてらこんな人形会館に訪れてみては、いかがでしょうか…?
(情報は2013年6月現在。詳しくはお問い合わせ下さい。)
※参考文献:「滋賀県選択無形民俗文化財 冨田人形調査報告書 平成十九年 七訂版」
※参考映像
第二回びわ湖e-まち映像協議会デジタル映像コンテスト優秀賞受賞作品
【湖北から伝える富田人形】
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冨田人形会館(冨田人形共遊団)
■所在地 〒526-0131 滋賀県長浜市富田町758番地
□代表者 阿部秀彦(冨田人形共遊団・団長)
■連絡先TEL 0749-72-5252 ( 長浜市役所びわ支所地域振興課 )
□開館時間 不定期・応相談
(見学には予め上記連絡先に連絡して代表者の方と相談の上、予約が必要です)
■料金 無料
□アクセス
●[公共交通] JR北陸本線「長浜駅」から車で15分
●[自 動 車] 北陸自動車道長浜ICより20分
■駐車場 自動車30台 バス4台
□HP
https://ja-jp.facebook.com/tonda.ningyo
■地 図 地図は
こちら
人形浄瑠璃 冨田人形・2013年夏の定期公演(冨田人形共遊団)
■公演場所 湖北文化ホール
〒529-0341 滋賀県長浜市湖北町速水2745
□TEL 0749-78-1287 ( 湖北文化ホール )
■入場料金 一般 1,200円 (前売り:1,000円 )
一般夏・秋通し券 1,500円
高校生以下無料
( ※ 全席自由席 )
□お問合せ 公益財団法人 長浜文化スポーツ振興事業団(長浜文化芸術会館内)
■TEL 0749-63-7400 ( 長浜文化スポーツ振興事業団:長浜文化芸術会館内 )
□FAX 0749-63-7401 ( 同上 )
■プレイガイド 長浜文化芸術会館・浅井文化ホール・曳山博物館・湖北文化ホール
びわ文化学習センター(リュートプラザ)・KEIBUN
□地 図 地図は
こちら
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