ここ最近、近江鉄道ネタが続きました。
この近江鉄道と甲賀市貴生川駅で接続するのが、信楽高原鐵道信楽線です。
信楽高原鐵道信楽線は、甲賀市の貴生川駅から信楽駅までを結ぶ、鉄道路線です。
旧国鉄信楽線の廃止に伴い、第三セクターとして再出発し現在に至る、とってもローカルな路線をご紹介しましょう。
営業キロ14.7km、駅数6駅、全線単線非電化路線で、終点駅の信楽駅にのみ駅員さんが常駐しており、他の駅はすべて無人駅となっています。
※起点駅の貴生川駅も駅員さんはいません。(JRの駅員さんはいますが・・・。)
それでは信楽線の歴史から見てみましょう。(Wikipediaより)
1933年(昭和8年)5月8日:国鉄信楽線として貴生川駅 - 信楽駅間 (14.8km) が開業。
雲井駅・信楽駅開業。
1943年(昭和18年)10月1日:不要不急線として休止。
1947年(昭和22年)7月25日:運行再開。
1953年(昭和28年)8月:集中豪雨により橋梁流失、不通に。
1954年(昭和29年):第一大戸川橋梁がプレストレストコンクリート橋梁として再建、運行再開。
1962年(昭和37年)10月1日:旅客列車を気動車化。
1963年(昭和38年)6月1日:勅旨駅開業。
1981年(昭和56年)9月18日:信楽線貴生川駅 - 信楽駅間廃止承認
1982年(昭和57年)10月10日:貨物営業廃止。
1986年(昭和61年)9月5日:第三セクター鉄道への転換を決定。
1987年(昭和62年)4月1日:国鉄分割民営化により西日本旅客鉄道(JR西日本)に承継。
1987年(昭和62年)7月13日:JR信楽線 (14.8km) 廃止、信楽高原鐵道信楽線 (14.7km) 開業。
紫香楽宮跡駅・玉桂寺前駅開業。
1991年(平成3年)3月16日:特殊自動閉塞化。貴生川駅 - 紫香楽宮跡駅間に小野谷信号場開設。
1991年(平成3年)5月14日:貴生川駅 - 紫香楽宮跡駅間の小野谷信号場付近でJR西日本の臨時快速との衝突事故(信楽高原鐵道列車衝突事故)が起き、42名が死亡。全線運休に。
1991年(平成3年)12月8日:運行再開。小野谷信号場の使用を停止し、全線1閉塞としてスタフ閉塞化。
1994年(平成6年)9月4日:休日ダイヤ実施。
1998年(平成10年)3月16日:土曜・休日ダイヤ実施。
2006年(平成18年)3月18日:ダイヤ改正で最終列車の時刻を繰り下げ。
2008年(平成20年)3月15日:土曜・休日も平日と同じダイヤに。
過去3回も運休または不通になっていることがわかります。
1回目は、戦争により、線路・枕木が資材供出されたため。
2回目は、第一大戸川橋梁が豪雨により流出したため。
3回目は、列車衝突事故のため。
信楽駅構内の展示より
開業当時の信楽駅と昭和30年頃の信楽線を走るSL
今日は信楽高原鐵道信楽線の各駅を訪れてみました。
まずは起点駅となる貴生川駅(きぶかわえき)
JR西日本、近江鉄道、そして信楽高原鐵道の3社が乗り入れる駅です。
信楽線は一番南側、JR西日本の3番線(草津方面)ホームの反対側にあり、ホーム上には、乗り換えのためのICOCAの改札があります。当然のことながら信楽高原鐵道ではICOCAの利用は出来ませんから、双方の乗り継ぎ(ICOCAの利用)には、この改札を通らなければなりません。
先ほど、貴生川駅には信楽高原鐵道の駅員さんはいないと申しましたが、そしたら切符の発券は?と思われるでしょう。
なんと起点駅にもかかわらず貴生川駅での乗車券発券業務は行われていません。JR改札の前に左の乗車駅証明書発券機があり、この証明書を受け取ってJRの改札を入り、車内にて精算することになります。
現在、信楽高原鐵道で運用されている列車は、SKR310形気動車(ディーゼル)です。
信楽高原鐵道信楽線は
高原と名が付いているだけあって、貴生川駅を発車すると33‰(パーミル:千分率)という勾配で坂を上がって行きます。33‰とは、1000メートル進むのに、33メートル上がるという勾配です。角度でいえば2度ほどでしょうか、普通で考えるとたいしたことないように思いますが、鉄道における2度というのは相当な急勾配となります。今どきのディーゼルエンジンなら難無く登っていきますが、昔のSLでは相当大変なことだったと思われます。
ディーゼルエンジンが唸りながら、急坂を登っていく様子は下記をご覧ください。
私が撮ったものではありませんが、素晴らしい映像です。
発車後、しばらくして橋を渡ってからの直線が見所です!
貴生川駅と次の紫香楽宮跡駅までは9.6kmもあり、ほとんど山間を走行します。
その紫香楽宮跡駅の手前には、忘れもしない1991年(平成3年)5月14日、JR西日本の臨時快速との衝突事故(信楽高原鐵道列車衝突事故)が起きた場所があります。
1991年(平成3年)5月14日、信楽町(当時)では「世界陶芸祭セラミックワールドしがらき'91」が開催されており、京都発信楽行きの西日本旅客鉄道(JR西日本)直通下り臨時快速列車「世界陶芸祭しがらき号」(キハ58系3両編成)と信楽高原鐵道信楽発貴生川行きの上り普通列車(SKR200形4両編成)が、10時35分頃正面衝突をし、42名が死亡(JR側乗客30名、信楽高原鐵道側乗客12名、職員5名)、614名が重軽傷を負う大惨事となりました。
事故現場には慰霊碑が建てられ、不幸にもお亡くなりになった方のお名前が刻まれています。
現場を訪れるとよくわかるのですが、両側を木々に囲まれた見通しの悪いカーブなんですね。
歴史に「タラレバ」はありませんが、これが見通しの良い直線区間だったら、沢山の方が死傷することも無かったかも・・・。あるいは衝突を未然に防げたかも・・、とつい考えてしまうのでした。
というより、ミスが無ければ事故そのものも起こっていないワケなのですが・・・。
私たち滋賀県民には、今も忘れることのできない事故です。
事故発生から、今年でちょうど20年。改めて安全を願いたいものです。
紫香楽宮跡駅(しがらきぐうしえき)
私はずっと「しがらきのみやあとえき」と思っていたのですが、正しくは「しがらきぐうしえき」でした。
1987年の信楽高原鐵道として開業時に出来た新しい駅です。
雲井駅
「鉄」ゴコロをくすぐる、とても趣ある駅で、駅舎横の大木が印象的です。
旧国鉄信楽線の開業と同じくして開業した駅です。というより、開業当時の信楽線には中間駅はこの駅しかありませんでした。
勅旨駅(ちょくしえき)
1963年開業の駅です。
ホームの待合室?には、青地に白文字の古い駅名板が残っています。
勅旨駅と次の玉桂寺前駅の間に、
第一大戸川橋梁というコンクリート製の橋があります。
何の変哲もないコンクリートの橋なのですが、実は国内初の長大ポストテンションコンクリート鉄道橋として、当時としては世界的にも例が無い、橋梁なのだそうです。
もともと鉄で出来た橋があったのですが、1953年の豪雨によって流失し、信楽線が不通になってしまいました。
当時は川の中に2本の橋桁を設け、3本の橋を繋いでいたものと思われます。その橋桁が流失してしまい、今度は橋桁の無い1本で、なおかつコンクリート製という前代未聞の計画がなされました。
当時のコンクリート橋は12m程度のものしか無く、30mというのは技術的に不可能と思われていたようです。またコンクリートには縮んでくる性質が有るらしく、そのあたりも実験を重ねながら施工されたようです。(実験も兼ねていたので、信楽線がローカル線だったことも大きな要因だったようです。)
そうして翌年の1954年に橋は完成し、信楽線の運行が再開されました。
最近の詳細な調査でも、全く異常は見られなかったそうです。
この橋梁建設の成功は、のちの新幹線などコンクリート橋の大きな礎となり、日本の高度成長を支えたと言っても過言ではないでしょう。
2008年、歴史的な建造物として登録有形文化財に登録されました。
流失した旧橋梁の橋桁跡?と放置された試験供試体
私は予め下調べをしてから行きましたので、無事確認できましたが、現地には何の案内もなく、橋に埋め込まれた銘板のみがその証となっています。というか、それしかありません。すこぶるマイナーな文化財ですが、せめて案内板くらいは設置して欲しいと思うのですが・・・。(誰も興味無い??)
観光案内所で聞いても、その存在すらご存知ありませんでした
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滋賀県甲賀土木事務所 管内の土木遺産
玉桂寺前駅(ぎょくけいじまええき)
1987年、信楽高原鐵道開業と同時に開業した駅です。
国道からはスグなのですが、まさに秘境駅といった趣です。
駅から吊り橋を渡ったところには、玉桂寺があり、弘法大師が自ら植えた高野槙(まき)が天然記念物となっています。樹齢500~600年、高さ29mもの立派な霊木だそうです。
いよいよ終点の信楽駅(しがらきえき)です。
ご存知、たくさんの狸がお出迎えです。
駅構内の一角には、先の信楽高原鐵道列車衝突事故を風化させまいと、事故車の一部を展示しています。
事故車の展示ブース、JR西日本の車両キハ58の一部と当日実際に掲げられていたヘッドマーク
こちらでは信楽線の歴史を、年表や写真で知ることもでき、また信楽焼の乗車記念切符の購入もできます。
信楽高原鐵道株式会社は、第三セクターにて運営されており、主な株主は甲賀市、滋賀県、近江鉄道他となっています。
しかし、全国の第三セクターが抱えている問題と同様に、経営的には大変厳しい状況にあるようです。
現在では事故の教訓を生かし、全線閉塞(全線に1車両しか通行しない)にし、さらなる安全に取り組まれています。
新名神もでき、車でのアクセスがとても早く、スムーズになりました。
ますます利用機会が減ってしまうかもしれません。
沿線住民でない私が言うのも何ですが、いつまでも存続してもらいたい路線です。
いま、信楽高原鐵道では、枕木オーナーを募集しています。
枕木1本、5,000円です。
私もこの機会に申し込んでみようかなと真剣に考えています。
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信楽高原鐵道枕木オーナー募集
信楽駅構内に掲げられた枕木オーナーさん
滋賀咲くブロガー滋賀の食爺さんのお名前も発見しましたよ!
より大きな地図で 信楽高原鐵道 を表示
※情報は2011年3月現在。詳しくは直接お問い合わせください。
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信楽高原鐵道株式会社
〒529-1851
滋賀県甲賀市信楽町長野192番地
TEL:(0748) 82-3391
FAX:(0748) 82-3323
http://www.biwa.ne.jp/~skr/