豊郷小学校旧校舎群

しがまにあスタッフ

2011年01月13日 20:00

2011年、新年初めてご紹介するオススメおでかけスポットは、
犬上郡豊郷町にある豊郷小学校旧校舎群です。




豊郷小学校旧校舎を語る上で、ポイントが3つ。

1つ目
個人の寄付によりヴォーリズが設計した校舎であること。

県内にはウィリアム・メレル・ヴォーリズ氏が設計した建物が多く残されていますが、この豊郷小学校も氏の設計のもと、1937年(昭和12年)5月30日に竣工しました。
コンクリート建築で水洗トイレや暖房設備まで完備しており、東洋一の小学校として当時としては類を見ない建物でした。
建築には当時のお金で60万円(現在にすると10数億円!)もの費用が必要でしたが、地元出身であり、同校の卒業生である、伊藤忠兵衛商店(現丸紅)専務の古川鉄治郎氏が全額私財から寄贈したものです。

2つ目
新校舎建て替え問題で、メディアを賑わせたこと。

数年前、耐震性能の問題から校舎建て替えの動きとなり、当時町長だった大野和三郎氏による強引な推進により町を二分する大きな問題となり、メディアを賑わせる事態となったことは記憶に新しいことです。
結局、校庭を挟んだ反対側に新校舎が建設され、旧校舎は保存されることになりましたが、旧校舎のまま授業を行われることは無くなってしまいました。
現在では、耐震補強などの大規模な改修工事が行われ、校舎群は町立図書館をはじめ、地域のコミュニティ施設として再利用されています。

このあたりの経緯については下記のサイトをご覧ください。
豊郷小学校の歴史と未来を考える会

3つ目
アニメけいおん!の主人公達が通う高校のモデルになったこと。

2009年からTBS系列で放映されたTVアニメけいおん!の主人公たちが通う私立桜が丘高校のモデルが、豊郷小学校旧校舎群とされ、校舎の外観や内装の細かなところまで劇中に登場します。

けいおん!とは?廃部寸前の軽音楽部を舞台に4人の女子高校生たちがガールズバンドを組み、ゼロから音楽活動を行っていくストーリーで、その楽曲の素晴らしさとマニアックな楽器や小物などが注目され、社会現象になるほどブレイクしたアニメです。

けいおん!公式ホームページ(TBS)

現在でも熱心なファンが聖地巡礼と称して全国から集まってきており、地元の商工会などが町おこしの一環として、カフェを開業したりイベントを行っています。


では早速、校舎を見て回りましょう。

まずは校門から。
校門は旧中仙道に面しており、竣工当時、道路はコンクリート舗装されたそうで、相当珍しかったようです。このカットはアニメにも頻繁に出てきます。


校舎の前には池があり、鯉の口から噴水が出ています。
そして校舎入り口の右手には古川鉄治郎氏の銅像があります。
劇中では帽子を被せられたり、コスプレ化していました。


校舎の中に入ってみると・・・懐かしいようで、新しい。
改築されたばかりということもありますが、私の記憶にある校舎というものではありません。

私の小学校時代といえば、まさに住宅建設ラッシュ真っ只中の昭和の40年代。
草津あたりでは毎年転入生の増加で、進級するごとに1クラス増えていくような状態でした。
小学校の低学年は薄暗い木造の校舎で、壁も床も天井もすべて木造。
そして高学年では、壁も床も天井もすべてコンクリートの明るい校舎でした。
ちょうど古い木造の校舎が、真新しいコンクリートの校舎へと建て替えられた時代でもありました。

壁や天井はコンクリートでありながら、床や窓は木造、意外にも古さを感じさせません。
当時いかにモダンな造りであったかうかがい知ることが出来ます。



現在校舎の1階には、豊郷町図書館、教育委員会、子育て支援センターなどが入居し、
町のコミュニティセンターとして利用されています。


校舎入口の正面には資料の展示室があります。
ここでは豊郷小学校の歴史や設計図などの古い資料が展示されています。

施工時のヴォーリズ設計事務所が作成した立体模型。


竣工式典で配られた、記念の文鎮。


建設時の設計図(クリックで拡大します)





この校舎で最も印象的なのは階段でしょう。



そして階段の手摺には、ブロンズのウサギとカメ。

誰もが知るイソップ寓話の「ウサギとカメ」をモチーフにしており、1階の手すりにはウサギとカメが並んでよーいドン。踊り場の手すりでウサギが寝ている間に、カメはゆっくりとではあるが着実に前進し、2階・3階と上がり、先にゴールするという物語になっています。

依頼主である古川鉄治郎が小学生の時、グズでノロマなためにみんなからいじめられていたけれど、当時の先生がこの物語を例に、コツコツと地道に努力することが大切であると解き、その教えのおかげで成功を得ることができたという。
その話を聞いたヴォーリズが古川の意思を後世に伝えるために、このウサギとカメの装飾を施したそうです。

しかし、このウサギとカメも戦争中には物資不足のため、供出されて無くなってしまったのですが、施工時の現場監督で、竹中工務店大阪支店長の神谷新一氏が、後年この豊郷小学校を訪れた際、この事情を知り、当時の資料や設計図からこのウサギとカメを自費で復元し、小学校に寄贈したそうです。
神谷氏はこの後、竹中工務店の専務副社長を勤められたそうです。

たくさんの人の思いの詰まったウサギとカメは、たくさんの生徒の手に触れ、
今も母校の大切な思い出になっていることでしょう。


いよいよ3階にある音楽室に足を運んでみましょう。


3つある階段のうち、中央部の階段のみが3階の音楽室に通じています。
実際には音楽室ではなく、唱歌室とあります。
この建物の最高ののポジションにある部屋が音楽室であることは、設計者のヴォーリズがキリスト教の宣教師だったことが深く関わっていたからなのかもしれません。ステージがあり、ここでどんな音楽の授業がなされていたのかとても興味を引く教室です。
ステージ横にはファンが持ち込んだ楽器が置かれており、誰でも自由に演奏することが可能となっています。。


音楽室(唱歌室)の隣には会議室があり、アニメの桜高軽音部の部室が再現されています。



けいおん!主人公達がバンドの練習もせず、放課後のティータイムを楽しんでいる様子が、
そのまんま再現されており、まさにアニメのシチュエーションそのものです。
そして黒板やホワイトボードには全国から聖地巡礼に集まったファンたちにより寄せ書きが記されています。


他にもファンが持ち込んだグッズやあしあとノートもあります。



この音楽室を含め、校舎全体がファンに解放されており、ここで自由に楽器の演奏や撮影をすることなどが許されています。こんな寛大な施設は今まで見たことがありません。しかし中には度を越す人もいるようで、こんな注意書きもありました。


つづいて校舎右側にある講堂です。
アニメでは学園祭などが行われ、軽音部のライブ会場でもありました。



2階席もある立派な講堂です。
同じヴォーリズ氏が設計した近江兄弟社学園の講堂に近いものがありますが、
1.5倍ほどこちらのほうが広いかもしれません。
1階の床はステージに向かって、ゆるく傾斜しており、木製の椅子が設置してあります。
とても趣があります。(体育館はこの講堂とは別にありました)

次は校舎の向かって左側、酬徳記念館(旧図書館)です。



中は天井が高く、とても開放的な空間です。
観光案内所があり、関連グッズの販売や、週末にはけいおん!カフェが営業しています。







そして館内の一角にはファン持ち寄りのけいおん!グッズの数々。
昨年盗難にあった楽器類も陳列されています。




ここで余談ながら、けいおん!の主な登場人物と使用楽器を紹介しましょう。
ちなみにバンド名は放課後ティータイム

平沢 唯(ひらさわ ゆい)
担当:ギターとボーカル(&MC)
使用楽器:ギブソン レスポール・スタンダード(ヘリテージ・チェリー・サンバースト)
メーカーサイト

秋山 澪(あきやま みお)
担当:ベースとボーカル
使用楽器:フェンダー ジャズベース(3トーン・サンバースト)レフティ仕様(左利き)
メーカーサイト

琴吹 紬(ことぶき つむぎ)
担当:キーボード
使用楽器:KORG(コルグ) TRITON EXTREME 76
メーカーサイト

田井中 律(たいなか りつ)
担当:ドラム
使用楽器:ヤマハ ヒップギグ(メローイエロー) シンバルはジルジャン
メーカーサイト

中野 梓(なかの あずさ)
担当:ギター
使用楽器:フェンダー ムスタング(レッド)
※1982年にアメリカでの生産は終了しているので、おそらくフェンダー・ジャパンだと思われる。
メーカーサイト


登場する楽器類以外の小物として、LOMO LC-Aというカメラ(ロシア製のトイカメラ)や、SONY製のカセットデッキ・SACDプレーヤーなどが、マニア心をくすぐるアイテムとして登場しました。
中でも秋山 澪が使用していたとされるAKGのK701というヘッドホンが、7万円以上するにもかかわらず注文が殺到し、国内在庫がなくなったという社会現象まで引き起こしました。
AKGK701メーカーサイト



取り壊しの憂き目にあったこの校舎たちですが、住民の大きな動きにより、存続することになりました。しかし税金を使い新たな校舎が建築され、学び舎としても機能は無くなってしまいました。
この小学校に通う生徒たちや近隣住民の方にとって、これで良かったのか、悪かったのかはわかりません。
しかし、地域のコミュニティスペースとして、そしてアニメの聖地として生まれ変わり、新たな役目ができたことには間違いありません。
これからも資金の問題を含め、いろいろな問題があると思います。でも今ここに先人たちが遺してくれたこの校舎たちが存在し、こうして見学できることを、単純に喜びたいと思います。



けいおん!ファンでなくても、滋賀県の文化遺産としてぜひとも押さえておきたいスポットです。
ぜひ聖地巡礼にいかがですか?

でも、けいおん!のDVDを見てから行くともっと楽しめるかも^^;
駐車場も入場料も無料です!!



おまけ
聖地巡礼に集まった痛車たち(駐車場にて)



飛び出し坊や(坊や?けいおん!ver.)




より大きな地図で 豊郷小学校旧校舎群 を表示
※情報は2011年1月現在。詳しくは直接お問い合わせください。

♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫♫

豊郷小学校旧校舎群

住所:滋賀県犬上郡豊郷町石畑518

お問合せ:豊郷町役場総務企画課
       0749-35-8111

開館時間:8:30~17:15
年末年始を除き、基本的に無休

公式サイト:http://www.toyosato-elschool.net/

けいおん!カフェの営業日は下記にてご確認下さい。
今日の部室(けいおんの舞台 豊郷小学校旧校舎群)


関連記事